あの子と達成するパフェ

なっちゃんといると、好きなものがいっぱい食べられてうれしいな。

10年前、そう言ってくれる女の子とよく一緒にいた。たとえば北国の高校生は、冬になると雪山に輸送され、スキー板をはめた足で何度も斜面を滑り落ちなければいけない日がある。行きのバスで私が「嫌だ」と呟くと、隣で「いつまでも山に着かなきゃいい」などとしみじみ返してくれる人だった。

札幌市の中心部、大通の駅ビルに「ひので」という喫茶店がある。ログハウスを連想させるてらてらと濃い茶色の木壁に、コーヒーの匂いと煙草の煙が漂い、新聞とあだち充の漫画が並ぶ。混雑した空気はないが、8割方の席は埋まっていた。高校生は見かけないその店に私たちはおずおずと入店し、一人ひとつ、大きなパフェを注文するのだった。

それは、味わうというより達成する食事だった。頂上のサクランボを支える何段もの生クリームをかき分け、側面に刺さるリンゴをつまみ、ざらりと冷たいアイスクリームにたどり着く。向かい合い黙々と食べ、お腹が痛くなっても二人で分けることはなかった。

店を出ると彼女はよく、満足そうに冒頭の言葉を口にした。その瞬間を思い出すたび、私はあのパフェをまた食べたくなります。

 

※エッセイ投稿サービスShortNote(ショートノート)のサービス終了に伴い、記事をこちらに移しました。みんなの経済新聞ネットワークとShortnoteのコラボコンテスト「地元の味」用に書いたもの。